相続放棄の期限の延長

文責:弁護士 上田佳孝

最終更新日:2020年11月25日

1 相続放棄は原則3か月

 相続放棄の期間は,相続の開始があったことを知ったときから「3か月以内」に行わなければならないのが原則です。

 この期間のことを「熟慮期間」といいます。

 熟慮期間をすぎると,相続人は相続を単純承認したものとみなされます(民法921条2号)。

2 熟慮期間を延ばす手続きがある

 この熟慮期間は,家庭裁判所に申し立てることで,期間を伸長することができます(民法915条1項)。

 ただ,これは期間伸長の申立てをすれば必ず認められるというものではなく,熟慮期間内に相続人が相続財産を調査しても,単純承認・限定承認・相続放棄のどれを選ぶか決定できないような場合に認められ,家庭裁判所にその旨を申し立てなければなりません。

3 自然災害の場合の特別な救済措置の法律がある

 自然災害や天変地異によって,この熟慮期間内に期間伸長の申立てができないこともあります。

 そのような相続人を救済するため,「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」という法律があります。

 この法律では,特定の非常災害によって,多数の住民が避難や住所移転を余儀なくされた場合,その地区に住んでいた相続人の熟慮期間を特別に伸ばして救済する旨が定められています。

 過去には,東日本大震災や熊本地震などの際にこの法律が適用され,被災者の救済が図られました。

 参考:東日本大震災の場合 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00109.html

4 感染症の場合は期間伸長の申立てで救済

 令和2年に流行した新型コロナウイルス感染症の場合は,全国的に緊急事態宣言が出され,自宅待機を求められました。

 ただ,この際には,上記の特別措置法が用いられたのではなく,法務省が「親族が亡くなったにもかかわらず新型コロナウイルス感染症の影響によって熟慮期間内に相続放棄等ができない場合は,この期間を延長するため,家庭裁判所に申立てができる。」と方針を出し,期間伸長の申立ての理由として認めることで救済を図りました。

 参考:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00025.html

5 必ずしも救済措置がとられるわけではないことに要注意

 このように,大規模災害の場合や全国的な感染症の流行の場合には,特別な法律や法務省によって,救済措置がはかられることもありますが,すべての災害や感染症にこのような救済措置が執られるとは限りません。

 原則として,熟慮期間は3か月であることを前提に,お困りの場合は速やかに弁護士にご相談されることをお勧めします。

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