相続放棄の期限に関するQ&A

文責:弁護士 上田佳孝

最終更新日:2020年06月17日

相続放棄の期限に関するQ&A

Q相続放棄の期限の3か月を過ぎてしまったのですが,まだ相続放棄できますか?

A

1 相続放棄は原則3か月以内

 相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に行わなければならないと法律で定められています。
 このような期間制限がある理由は,相続人にお金を貸していた人等,債権者を保護するためです。
 つまり,相続人が相続放棄をするのかどうかがいつまで経っても分からない場合,亡くなった方にお金を貸していた人は,お金を相続人に請求してもいいのかどうかが分からない状態が続いてしまうため,そのような不安定な状態が長く続くことを防ぐために3か月の期間制限が定められました。
 この期間制限は厳格なものであり,3か月が経過した場合は,原則として相続放棄が認められません。

 

2 3か月が経過しても例外的に相続放棄が認められる場合

⑴ 昭和59年の最高裁判所の判断
 最高裁判所は,3か月の期間が経過した場合であっても,例外的に相続放棄ができる場合があることを認めています。
 その条件を簡単にご説明すると,①相続人が相続財産が全く存在しないと信じ,②相続人と亡くなった方の交際状況などから相続財産の調査が著しく困難であり,③相続人が①を信じる相当な理由があることです。
 これらの条件を満たせば,相続人が相続財産の存在を認識したときから3か月間は相続放棄が可能ということになります。
 たとえば,何十年も交流がなかった親が亡くなり,そのことを役所の通知等で知ったものの,何らの手続きもしていなかったが,その後亡くなった親の税金の滞納通知が来た場合などが,上記条件を満たしうる事例といえます。
⑵ 昭和59年の最高裁判決以降の裁判例
 上記最高裁判決の条件はかなり厳しいものでありますが,近年の裁判所はもう少しゆるやかに3か月の期間制限の例外を認める傾向にあります。
 たとえば,①の相続人が相続財産が全く存在しないと信じたという条件については,相続財産があることは知っていたが,自分以外の相続人が相続するため,自分が相続することはないと信じていたような場合であっても,①の条件を満たすという裁判例があります。

 

3 まずは弁護士に相談を

 以上のように,相続放棄は3か月以内が原則ではありますが,3か月が経過した場合であっても,例外的に相続放棄が可能な場合があります。
 仮に3か月間の期間が過ぎてしまっている場合であっても,まずは弁護士に相続放棄ができるかどうかを相談することが大切です。

Q期限内に相続放棄しないとどうなりますか?

A

1 相続放棄をしなかった場合は,財産と負債を受け継ぐ
  故人が亡くなった後,その相続人は亡くなった方の財産とともに,その負債も受け継ぎます。
  そのため,亡くなった方に財産がないからと相続放棄をしないで放置していると,その負債だけを受け継ぐことになってしまいます。
  亡くなった後,そのご親族はご葬儀や死後事務手続きなどに追われることになりますが,相続放棄をするためには,原則として亡くなったことを知ってから3か月以内に手続きをしなければなりませんので,ご注意ください。
  相続人が相続放棄をしなければ,亡くなった方の借金については,他の相続人とともに,その法定相続分にしたがって分担して支払う義務を負うことになります。

2 相続放棄は家庭裁判所に申述する必要がある
  相続人が相続放棄をする場合,他の相続人や債権者に対して,相続放棄をする意思を伝えるだけでは足りません。
  相続人が相続放棄をする場合,家庭裁判所に相続放棄をする旨の意思表示を申述しなければなりません。
  民法で相続放棄を家庭裁判所に申述しなければならないと定められているのは,相続放棄をしたかどうかは他の相続人や債権者の権利や義務にも密接に関わるため,裁判所で明確にしておく必要があるからだと説明されています。
  また,相続人が相続放棄の申述を申し立てる家庭裁判所は,全国どこの裁判所でもよいわけではなく,亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要がありますので,この点の調査も必要です。

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